MRの働き方改革 大手製薬会社はどのようにバーチャルオフィスを浸透させたのか
医薬品メーカー側の立場から、医師をはじめとする医療関係者に自社製品の情報を提供し、医薬品の適正使用を促進することを職務とするMR(Medical Representatives)。MRは担当する病院を日々訪問しますが、営業拠点があるとどうしても拠点をベースとした働き方を余儀なくされてしまいます。その結果、一日の大半を移動時間が占めてしまうこともありますが、こうした事象は業界の慣習として当たり前ととらえられてきました。
そのような働き方にメスを入れたのが製薬業界大手のアストラゼネカです。全国のオフィスを撤廃した後に、バーチャルオフィスoViceを活用することでMRを含めた社員の働き方改革に取り組みます。同社ではどのように新しい働き方を実現させたのか、インタビューに答えていただきました。
企業名:アストラゼネカ株式会社(公式サイト:https://www.astrazeneca.co.jp/)
取材対象者:コマーシャルエクセレンス本部 山下さん、インフォメーション&デジタルソリューションズ本部 大河原さん
利用人数:約1500名
企業概要:英国・ケンブリッジに本社を置き、世界100カ国以上に拠点を持つ製薬会社。日本法人は2000年に設立。
<活用のポイント>
- 仕事時間の多くが移動に費やされてしまうMRの働き方を改善するため、全国の営業拠点を閉鎖。カフェやレンタルオフィスを利用したり、oViceでミーティングなどをしたりという働き方に
- バーチャルオフィス導入により、拠点が離れているなどでこれまで会うことがなかった人とのコミュニケーションが可能に
- oViceなら会議室を出ても雑談ができるので、オンラインであっても物理的に対面してのコミュニケーションと同様の流れが作れる利点があると評価。今後も人との距離を縮めるのに活用したい
移動が大半を占めるMRの働き方を改善し、バーチャルオフィスを導入
ーまずはバーチャルオフィスを導入する前の課題から教えてください。
実はコロナ前から、MRの働き方は課題となっていました。彼らは営業の合間に営業拠点に寄るのですが、ちょっとしたデスクワークのためにも、わざわざオフィスに帰ってこなければならず、仕事時間の多くが移動に費やされ、あまり効率的な働き方ができていませんでした。
そのような課題感は、以前から業界全体にあったものの「MRの仕事とはそういうものだ」と誰もが諦めていました。しかし、仕事をより効率化するために「本当にオフィスは必要なのか」と見直すことにしたのです。
そこでアストラゼネカでは思い切って、MRがより柔軟な働き方ができるように、2021年4月に全国の営業拠点を閉鎖しました。
ー営業拠点を閉鎖された後、すぐにバーチャルオフィス導入へと至ったのでしょうか?
いえ、最初はオンラインでコミュニケーションができればいいと思い、オンライン会議ツールを導入しました。オフィスがなくても業務のコミュニケーションはできるようになったのですが、そこで新しい課題が見つかりました。
オンライン会議ツールの場合、ミーティングが終わって退室すると、そこで会話も終わってしまいますよね。そのため、業務以外のプライベートな会話が激減し、以前のようなチームの一体感が希薄になってしまったのです。
ーそこからバーチャルオフィスの導入を検討し始めたのですね。
当社にはアイデアファンドという仕組みがあります。この取り組みの一つとして、「オフィスをなくしても働きやすい環境を作るには?」とメンバーたちからアイディアを集めました。そのアイディアの一つがバーチャルオフィスの導入だったのです。
バーチャルオフィスのアイディアを出してくれたMR何人かを集めて「どうやったらバーチャルオフィスを使って効率的に働けるか?」と議論しあいました。また、バーチャルオフィスのツールについては事前にIT部門でパイロット導入しており、すぐに使える環境が整っていました。
oViceに決めた理由は“ハードルの低さ”
ーなぜoViceを選んだのか教えてください。
使いやすさはもちろんのこと、一番の決め手は導入のハードルが低いことでした。他社のバーチャルオフィスツールには初期費用や月額費用が高いものが多い一方で、oViceはコストを抑えて導入できました。
使ってみて、よければ後からバーチャル空間のオフィスを拡張するなどもできるので、初めてバーチャルオフィスを導入する私たちにとってはとても都合が良いと思いました。
社内イベント開催・oViceスペシャリスト・ヘルプデスク…3つの工夫
ーoViceを導入してから、どのように社内に浸透していったのか教えてください。
まずはバーチャルオフィスとしてではなく、社内のオンラインイベントの会場として使いました。最初は100人規模のイベントから始めて、200人、300人と規模を拡大しています。今でもイベントは続けていて、現在は600人が参加するまでに成長しています。
みんながイベントに慣れてきたところで、徐々に日々の業務でも活用してもらうようにしました。この時もMRではなく、IT部門から始め、徐々にITツールに抵抗のなさそうな部署から導入していきました。
一番注意したのは、会社が勝手に決めたツールを押し付ける印象を与えないことです。常にメンバーの意見に耳を傾けながら、メンバー自身が前向きに利用してもらえるように注意しました。
ーMRの部署にはどのように導入したのでしょうか?
MRの中にもoViceのファンになる人たちがいたので、各チームでoViceスペシャリストを作りました。何か困ったことがあった時に、同じチームに相談できる人がいる方が安心できると思って。
自然とoViceのファンが現れるチームもいれば、こちら側からお願いしてoViceのスペシャリストになってもらうチームもいます。おかげでMRにもスムーズにoViceを使ってもらえたと思います。
ー他にもoViceを普及させるために工夫したことがあれば教えてください。
ヘルプデスクや業務上必要となる窓口をoVice上に設置するようにしました。困ったことがあればすぐに相談できるようにし、oVice上で働きやすい環境を整えたのです。
また、業務で必要となる窓口をoViceに置くことで、必然的にoViceにログインする機会を増やして慣れてもらうことにしました。
「社外ともoViceでつながる」この先の構想
ー現在の働き方について教えてください。
MRについては、現在はハイブリッドワークを導入しています。外勤、レンタルオフィス、在宅、oViceを活用しています。直接会うことも引き続き重要だとは思いますので、対面が望ましいと判断される時には、貸会議室でタウンミーティングを設けるなどしてカバーするようにしています。
MRは外回りが多いので、病院近くのカフェやレンタルオフィスで働いている方も多いですね。その合間を縫ってoViceでミーティングなどをしています。
営業拠点がなくなることにより、これまで以上に各従業員が自らの裁量で付加価値の高い時間の使い方をすることが求められるようになりました。
また、オフィスへの通勤にかかっていた時間をプライベートの時間にあてられたりと、時間をより有効活用できていると思います。
ーoViceを導入しての変化はありましたか?
これまで会うことがなかった人とコミュニケーションできるのは面白いと思います。例えばこれまで絶対に会うことのなかった沖縄の人と北海道の人が隣の席で働くことも、oViceでは起こり得ます。
物理的な距離だけでなく、上司と部下の距離も縮まったと思います。また、これまでは交流のきっかけのなかった人物ともばったりoVice上で会って話すこともあります。そのようなコミュニケーションが生まれるのoViceならではですね。
ー最後に、今後oViceでやってみたいことがあれば聞かせてください。
リアルのオフィスとoViceをシームレスにつなげる仕組みを作りたいです。本社や支社においては、コロナが収束すれば今よりも出社する人が増えると思うのですが、コロナ以前よりも快適に働けるようにしたいと思っています。
オフィスに出社してもoViceに出社しても、変わらず働きやすい環境を作りたいと思います。
また、社内だけでなく社外ともoViceで繋がれれば嬉しいです。今でもドクターや医療従事者の方とはオンライン会議ツールを使っているのですが、退室ボタンを押すとそこで会話が終わってしまうので、そのことをもったいなく思っています。
oViceなら、会議室を出ても雑談することもできますよね。物理的に対面してのコミュニケーションと同様の流れが作れます。そんな風に、社外の人ともoViceでコミュニケーションをして距離を縮められればと思います。